全国においては、男性の死亡数と年齢調整死亡率はどちらも女性の5~8倍程度多い。北海道でも、例年、男性の死亡数は女性の5倍前後となっている。これは、食道がんの危険因子が飲酒や喫煙であるためと考えられる。北海道全体としての女性のSMRは約110であったが、対象とした10年間で、食道がんで女性が全く死亡しなかった町村も少なくない。食道がんの男女総合のSMRは、ここ30年間、低下傾向を示しており、第3巻(1986~1995年)の数字より約15 ポイント低下した(図1)。
全国においては、胃がんの年齢調整死亡率は、男女とも、ここ数十年、一貫して減少しているが、死亡数は男女合計年間5万人程度で、さほど変化していない。胃がんは長らくわが国における部位別悪性新生物死亡数の首位を占めてきたが、男性では1993年(平成5年)に肺がんに、女性では2003年(平成15年)に大腸がんに、それぞれ抜かれた。2015年(平成27年)のわが国においては、部位別悪性新生物死亡数として、男性で2位、女性で3位となっている(表2)。食生活の洋風化、冷蔵庫の普及による塩蔵食品摂取の減少、医療技術の進歩、検診による早期発見・早期治療などが胃がん年齢調整死亡率の減少に寄与していると考えられるが、最近、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんの発症に関与していることが判明し、除菌治療が普及してきたことは、将来の胃がんの死亡率の推移に影響を与えると考えられる。
北海道は、男女とも、SMRは有意に低かった。1996年(平成8年)以降、SMRは増加傾向にはあるものの(図1)、この20年間での増加は2ポイント程度に留まっている。
「大腸がん」は「結腸がん」と「直腸S状結腸移行部及び直腸がん」を合計したものである。わが国の大腸がんによる死亡数は、男女とも、ここ数十年、一貫して増加している。2015年(平成27年)のわが国において、男性では部位別悪性新生物死亡数の3位、女性では1位となっている(ただし、年齢調整死亡率は、男女とも、1990年代半ばをピークとして、減少している)。大腸がんは元来、欧米人に多いがんであった。しかし、戦後の日本人の食生活の洋風化による動物性食品・動物性脂肪等の摂取の増加に伴い、大腸がんも増加してきた。2014年(平成26年)のわが国の「結腸がん」と「直腸S状結腸移行部及び直腸がん」の粗死亡率は、男女とも、2013年(平成25年)の米国のそれぞれの粗死亡率を上回っている(国民衛生の動向 2016/17,424頁)。
北海道は、男女とも、大腸がんのSMRは有意に高かった。北海道民の動物性食品摂取量が全国より多いことが関与していると思われるが、大腸がんのSMRは本シリーズ第2巻(1983年~1992年)以来、全国より1割程度高い状態が続いている(図1)。北海道の女性の部位別悪性新生物死亡順位において、大腸がんが初めて1位になったのは1997年(平成9年)のことであり、これは全国の2003年(平成15年)より6年早い。
肝臓がんの90%近くは、B型肝炎ウイルス(HBV)あるいはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染が原因とされている。1980年代半ばから進められているB型肝炎母子感染防止事業はきわめて効果的であり、かつこれからはこの事業によりキャリア化を免れた女性が出産の主力となることから、わが国における今後のキャリアの新規発生は、年間10件程度まで低下するであろうと言われている。さらに、2016年(平成28年)10月からは、乳児を対象として、B型肝炎ワクチンが定期接種となった。これらの結果、数十年後には、HBVを原因とする慢性肝炎・肝硬変・肝臓がんはほとんどなくなると考えられている。HCVには、目下、有効なワクチンはないが、輸血などの血液感染が主であるため、厳重な対策が取られている現在の状況から、さらに、ここ数年の間に極めて効果的なC型肝炎治療薬が登場したことから考え、HCVによる慢性肝炎・肝硬変・肝臓がんも長期的には低下に向かうであろう。
北海道の肝臓がんのSMRは男女とも80%台で、ここ数十年、この状態が維持されている。市区町村のほとんどは100未満で、かつ有意に低いところも多かった。
胆嚢がんは全国レベルでは、死亡数が増加しているがんである(年齢調整死亡率は1990年代半ばから減少傾向)。北海道全体としては、男女ともSMRは有意に高かった。有意に低い自治体は、札幌市の一部の区を別として、なかった。保健所別にみても、有意に低いところはなく、ほとんどでSMRは100を超えていた。
一般に、ほとんどの病気は男性に多いが、胆嚢に関係する疾患や甲状腺の疾患、自己免疫疾患は女性に多い。北海道においても、全国同様、胆嚢がんによる死亡数は女性が男性より多かった。
全国レベルでは、膵臓がんは、死亡数も年齢調整死亡率も、男女とも増加が続いており、2015年(平成27年)には男性では部位別悪性新生物死亡数の5位、女性では4位であった(表2)。これに対し、本道では男性では4位、女性では3位であった。実際、北海道全体としての膵臓がんの男女総合の粗死亡率は、都道府県の中で一・二を争う高さであって、今回も、男女総合のSMRは約126であった。本シリーズ第2巻(1983年~1992年)以来、全国より2割以上高い傾向が継続している(図1)。
有意に高いSMRを示した自治体は多く、逆に有意に低いSMRを示した自治体はなかった。膵臓がんも大腸がん同様、食生活の洋風化の影響が強い。北海道において、大腸がんおよび膵臓がんのSMRが高いことと、動物性食品の摂取が全国より多いこととは、浅からぬ関連があると考える。
わが国の肺がんの死亡数は、ここ数十年、男女とも単調に増加し、2015年(平成27年)現在、男性では部位別悪性新生物死亡数の1位、女性では2位となっている(表2)。ただし、年齢調整死亡率は男女とも、1990年代半ばをピークとして、減少している。
肺がん(特に扁平上皮がんおよび小細胞がん)と喫煙との関係はよく知られている。男性の喫煙率は、1966年(昭和41年)には84%近かったが、以後漸減して、2015年(平成27年)には31.0%となった(日本たばこ産業による)。女性も、1966年(昭和41年)には約18%であったが、2015年(平成27年)には9.6%となった。喫煙率の変化と肺がん年齢調整死亡率の変化は、30年程度の間隔を置いて連動するとされているが、特に男性の状況は、これに良く当てはまる。2008年(平成20年)から、本人確認をすること等により未成年者がたばこ自動販売機を利用しにくくする方策が採られている。また、2010年(平成22年)10月には税率が引き上げられ、たばこの価格が急激に上昇した。今後の喫煙率の動向が注目される。
北海道全体としては、男女とも有意に高いSMRを示していた。男女総合でも、全国より1-2割高い状態がここ30年続いており、かつ最近20年間は漸増傾向にある(図1)。2015年(平成27年)の女性の部位別悪性新生物の死因順位で、肺がんは、全国で2位だったのに、本道では1位だった(表2)。これは、2006年(平成18年)に肺がんが大腸がんを抜いてトップに立って以来、続いていることである。北海道の喫煙率は、男女とも、例年、全国より5~8ポイントほど高く、これが北海道の肺がんの死亡率の高さに関与していることは確実である。
今回も「乳がん」は女性のみを対象とし、ごく少数ながら認められる男性乳がんは計算から除外した(本道では、例年、1~5人程度の男性が乳がんで死亡している)。乳がんは、大腸がんや膵臓がんと同様、国民の食生活の洋風化が寄与していると考えられる。全国レベルでは、死亡数も年齢調整死亡率も、ほぼ単調な増加が続いており、女性の部位別悪性新生物死亡数では、2015年(平成27年)現在、膵臓がんに次いで5位となっている。ただし、女性乳がんは比較的若年から発症する場合が多いため(罹患率は40歳台が最高)、現在より若年人口の多い1985年モデル人口を使用している年齢調整死亡率では、2014年(平成26年)の時点で大腸がんに次いで2位となっている。
乳がんも欧米人に多いがんである。2013年(平成25年)の米国の乳がんの粗死亡率は女性人口10万対26.7、フランスは35.5であったが、2014年(平成26年)のわが国は20.6であった(国民衛生の動向2016/17,424頁)。わが国の乳がんの粗死亡率は上昇を続けており、やがて、大腸がんのように、減少傾向にある米国を抜く可能性がある。
今回も北海道全体としてのSMRは有意に高く、人口の多い市のSMRが高いことが目立ったものの、北海道全体あるいは各市区町村のSMRを膵臓がんと比較すると、「おとなしい」印象を受ける。ただし、2000年(平成12年)以降、北海道のSMRは上昇傾向を示しており、今後の動向が注目される(図1)。
子宮がんには体がんと頸がんが含まれるが、これらの危険因子は別である。例えば、早婚は頸がんの危険因子であるが、晩婚や独身は体がんの危険因子である。わが国では現在、頸がんの原因とされるヒトパピローマウイルス(16・18型)に対する予防接種が、中学生に対して定期接種として実施されているが、2013年(平成25年)6月以降、副作用などの問題から、積極的勧奨は差し控えられている。
わが国における子宮がんは、年齢調整死亡率の低下が2005年(平成17年)まで、死亡数の低下が1990年(平成2年)まで、それぞれ続いていたが、両者は最近漸増傾向にある。
本来、体がんと頸がんは別々に集計すべきところであるが、市区町村別の部位別データの入手が困難であることから「子宮がん」に一本化した。調査対象の10年間で、大部分の町村において死亡数は1桁に留まり、かつ北海道全体としてのSMRは有意ではなく、全国並のレベルであると考えられたものの、今回その値が初めて100を上回り、かつ漸増傾向にあること(図1)から、本道においては、全国レベル以上に子宮がんによる死亡が増加していることになり、今後注視すべきであろう。
腎不全による死亡の約6割は慢性腎不全によるものである。北海道全体の男女総合としてのSMRは約130で、有意に高いという結果であった。多くの市のSMRが有意に高く、中には200前後、つまり全国の約2倍の死亡率を示しているところもあった。なぜ北海道に腎不全による死亡が多いのかは明確でない。市部に高いところが目立ったのは、長期にわたる治療のため、透析施設を有する病院がある市へ転居する患者がいるためかも知れない。
肺炎は、19世紀末のわが国では、死因順位の1位であった。その後、胃腸炎や結核に首位の座を明け渡したが、戦後しばらくは、乳児の死因として重きをなしていた。現在、乳児を含む若年者が肺炎で死亡することは、きわめて稀となった。その一方で、高齢者の死因としての肺炎(特に嚥下性肺炎)は、大きな問題となっている。65歳以上においては、年齢が5歳上昇すると肺炎による死亡率が2倍以上となるという指数関数的増加が認められている。わが国において、2011年(平成23年)には、肺炎による死亡数はとうとう脳血管疾患を抜いて3位となった。
北海道全体としてのSMRは有意に低かったが、高い自治体と低い自治体が混在していた。
虚血性心疾患には、心筋梗塞や狭心症が含まれ、欧米人に多い疾患とされる。男性の虚血性心疾患の人口10万対粗死亡率は米国で140.3(2013年)、ドイツで170.2(2013年)であったのに対し、2014年(平成26年)のわが国は68.7であった(国民衛生の動向2016/17,424頁)。なお、フランスは65.3(2011年)と、欧米諸国の中では例外的に、わが国よりも低い(いわゆるフレンチ・パラドックス)。これに対しては、フランス人は日常ワインを飲用しており、その中に含まれているポリフェノール(ベンゼン環に複数の水酸基が結合した化合物)が動脈硬化を抑制していると考える説もある。虚血性心疾患の危険因子として、喫煙・高血圧・A型性格(Aggressive 攻撃的、Active 活動的、 Angry 怒りっぽい、Ambitious 野心的)などが挙げられている。
興味あることに、北海道全体の虚血性心疾患のSMRは、ここ30年ほど、一貫して低下している(図1)。北海道のSMRは、男女とも、本シリーズ第2・3巻では有意に高かったのに、男性では第4巻(1990年~1999年)において、女性では第5巻(1993年~2002年)において、それぞれ有意差が消失した。その後、男性は第5巻で、女性は第6巻で、それぞれ有意に低くなった。男女総合では、およそ2000年(平成12年)を境にして、有意に高い状態から低い状態となったことになり、ここ30年でSMRは30ポイント以上も低下した(図1)。
都会型の生活様式は、そうでない生活様式より、虚血性心疾患のリスクを高めるという説もあるが、札幌市など人口の多い市では低いところも多く、今回の結果を見る限り、この説は必ずしも当てはまらないようである。ただ、札幌市においては、救急体制が次第に整備されてきており、2002年(平成14年)と2005年(平成17年)の医療施設調査によれば、面積1,000km2当たりの3次救急病院数が3.12であって、札幌市以外の北海道が0.07であるのに対し、相当に恵まれた状況にあり(西、出火100件当たりの死者数と救急病院数との関連性、近代消防、2011;51:53-55)、札幌市は全道人口の約3分の1を占めることから、札幌市における救急医療環境の整備が進んでいることが、北海道全体の虚血性心疾患の死亡を低下させている一因かも知れない。
今回、男女総合の北海道全体としてのSMRは100を切った。道東の市町村で高い傾向は依然続いているが、市部では第8巻(2003年~2012年)に比べ、SMRが数~10ポイント低下したところが多かった。
「不慮の事故」に含まれるのは「交通事故」、「窒息」、「不慮の溺死及び溺水」、「転倒・転落」、「煙・火及び火炎への暴露」、「有害物質による不慮の中毒および有害物質への暴露」などであるが、例えば2014年(平成26年)において、交通事故は「不慮の事故」の15%程度を占めているため、今回も前回に引き続き、交通事故を除いたものを提示した。
2011年(平成23年)における、わが国全体としての「不慮の事故」による死亡数は、東日本大震災の影響によって、前後の年に比べ、2万人ほど多くなっている。このため、今回の「不慮の事故(除・交通事故)」の期待数も、第7巻以前で算出した数字よりかなり高くなり、結果としてSMRは低くなった。
わが国の人口動態統計上の年間自殺死亡数は、1998年(平成10年)から2009年(平成21年)まで(2006年を除いて)、30,000人以上で推移したが、2010年(平成22年)に30,000人を割り込んで以降単調に減少している。1980年代から1990年代前半までは、ほぼ20,000人台だったのが、ここまで増えたのは、特に、バブル経済崩壊後の経済不況を反映した50歳前後の男性の自殺が多くなったからである。同時に、最近、自殺者が減少したことには、経済状況の好転の寄与が大きいと考えられるのである。
本巻における数字、つまり2006年(平成18年)~2015年(平成27年)の10年間の北海道における自殺による死亡数は、男性9,241人と、1996(平成8年)~2005年(平成17年)の第6巻(9,972人)以来、初めて10,000人を下回った。女性も3,862人と第6巻(3,919人)より減少した。男女総合SMRも第6巻とほぼ同水準まで低下した(図1)。
悪性新生物は1981年(昭和56年)からわが国の死因順位の1位となっている。2014年(平成26年)の死亡数は368,103人で、死亡総数(1,273,004人)の28.9%を占める。わが国の悪性新生物の部位別の頻度は、戦後、欧米諸国に近づいた。胃がん・子宮がんが減少、肺がん・大腸がん・乳がん・膵臓がん・前立腺がんが増加した。ところが、肺がんと大腸がんの年齢調整死亡率は1990年代半ばをピークとして、前立腺がんは2000年(平成12年)をピークとして、いずれも低下してきた。これに対し、乳がん・膵臓がんはまだピークを迎えてはいない。
北海道では、男女ともSMRは有意に高かった。都市部で高いことが目立った。ただし、その中身、つまり北海道民の部位別のがん死亡は、全国とはかなり異なっている。表2に2015年(平成27年)の部位別悪性新生物の死亡順位を示すが、北海道の女性は、全国と比べ、肺がん・膵臓がんが多く、胃がんと肝臓がんが少ないこと、男性も、膵臓がんが4位となっていることなど、道民の悪性新生物による死亡状況の特異性が際立つ。また、北海道における膵臓がんの死亡数は、女性の方が男性より多い年がしばしばみられる。
「心疾患」は、心臓の病気で死亡した例のみを表しているのではない。「心不全」が「その他の型の心疾患」の中にかなりの割合で含まれるからである。人間が死ぬ際は、すべて心臓が機能しなくなるのであるから「心不全」は理論的には死因として間違いではなくても、元々の疾患が何であったかを明らかにできなくなるという点において、使用すべきではない診断名である。ところが、全心疾患死亡数の消長を左右するのは、実は「その他の型の心疾患」の動向、すなわち「心不全」の多寡である。1994年(平成6年)に、死亡診断書に疾患の終末期の状態としての心不全を使用しないこととされたため、この年から「心疾患」による死亡数が激減し、1995年(平成7年)には、脳血管疾患が死因順位第2位となり、心疾患は3位となったのである。ところが、その後、再び「その他の型の心疾患」が増加し始め、それと平行して心疾患死亡も増加して、1997年(平成9年)以降、死因順位の2位となっている。2014年(平成26年)の死亡数は196,925人で、死亡総数の15.5%を占める。
北海道全体としてのSMRは男女とも、100を1~2ポイント超える程度であった。有意であったのは、死亡数も期待数も大きかったためでもあるが、虚血性心疾患が男女とも有意に低かったのとは対照的である。市区町村別に見ても、心疾患のSMRの高低と、虚血性心疾患のSMRの高低は、必ずしも一致しない。地域により、心不全と診断される傾向が異なるためと考えられる。しかし、ここ30年間の推移をみると、SMRの値はほぼ単調に低下していることがわかる(図1)。これは、虚血性心疾患の減少が寄与しているものと考えられる。
脳血管疾患は、近年、死亡数が低下する傾向にあったが、2011年(平成23年)にはとうとうわが国の死因順位の4位に後退した。同年の死亡数は123,867人で、死亡総数の9.9%と、初めて10%を下回った。2014年(平成26年)の脳血管疾患による死亡数は114,207人で9.0%まで低下している。なお、最近は、脳血管疾患死亡の中に占める脳内出血の割合は減少しており、脳梗塞の割合が多くなっているが、2005年(平成17年)10月からは脳梗塞に対するtPA静注による血栓溶解療法が認められ、さらに最近ではカテーテルによる脳血管内治療も普及しつつあることから、将来の脳血管疾患による死亡数はさらに減少すると期待される。
北海道では、男女ともSMRは有意に低かったが、道東、特に十勝平野に位置する市町村で低く、道南で高い傾向は、以前から続いている。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎などを包含し、閉塞性換気障害を特徴とする病態であって、喫煙が原因となることが多いとされている。北海道では、全体としてのSMRは有意に低かったが、地域別にみると、バラツキは大きかった。喫煙者の死亡原因は、肺がんや心筋梗塞などが多いとされることから、地域による喫煙率の差がストレートに慢性閉塞性肺疾患のSMRに反映されているとは考えにくく、また、医師の診断の「癖」などの人為的要因が絡んでいる可能性は否定できない。
死因としての老衰は、最近絶対数が増加していて、死因順位も上昇している。特に、ここ10年ほどの増加は顕著で、わが国全体としては、2004年(平成16年)には24,126人だったのが、2014年(平成26年)には75,389人と、10年間で3倍以上となっている。北海道のSMRは、男女総合で66.2と、かなり低い値であった。厚労省が発表した、2010年(平成22年)の都道府県の老衰の人口10万対年齢調整死亡率によれば、男性は、福岡県3.6、沖縄県3.7、佐賀県3.8、奈良県と大阪府が4.4、北海道が4.5で、北海道は下から6番目と低いが、「老衰」という死因も、医師の診断の「癖」に相当左右される側面を持っているため、今回の結果の解釈には注意が必要であろう。
全国においては、男性の死亡数と年齢調整死亡率はどちらも女性の5~8倍程度多い。
北海道でも、例年、男性の死亡数は女性の5~6倍となっている。これは、食道がんの危険因子が飲酒や喫煙であるためと考えられる。小樽市・釧路市・函館市・室蘭市など、港町で高いことが目立った。北海道全体としての女性のSMRは、全国並みであったが、対象とした10年間で、全く食道がんで女性が死亡しなかった町村も少なくない。食道がんの男女総合のSMRは、ここ30年間で低下傾向を示しており、第2巻(1983~1992年)の数字より10ポイント以上低下した(表3)。