人口10万人当たり・1年当たりの単純な死亡率、つまり粗死亡率は、計算が極めて単純なことから、ある集団の健康状態を表す指標の1つとして使われます。ところが、年齢構成が違う集団を比較するときは、粗死亡率は使えません。現在のわが国は、自治体によって、年齢構成にかなりな差があります。また、過去数十年前と現在とでも差があります。そこで、年齢構成の相違による影響をなくした上で死亡率を算出するために採用されるのが年齢調整死亡率と呼ばれるもので、これは、当該自治体の年齢構成が、ある標準的な集団と同じであったとしたら、死亡率はどれくらいになるのか、を表すものです。
実は、この年齢調整死亡率には直接法と間接法の2種類があります。このうち間接法は、人口が少ない集団を対象に算出しても、比較的安定した数値が出てくることが知られているため、市町村に対して頻繁に使用されています。本シリーズで採用されている標準化死亡比は、Standardized Mortality Ratioの訳で、通常SMRと称され、この間接法で算出されるものです。このSMRは、標準とした集団の死亡率(通常は全国)を100とした場合、当該市町村の死亡率がその何%に当たるのかを示すため、理解が容易です。厳密なたとえではありませんが、粗死亡率は試験の素点、SMRは偏差値のようなものと考えて下されば結構です。
このシリーズも、本巻で7冊目となり、約4半世紀に渡り刊行されていることになりますが、この事実は、主要死因のSMRが、道内各自治体の保健施策を策定するために不可欠であり、かつシリーズの内容が各自治体によく理解されていることの証左でもあります。本巻では、さらにわかりやすくするための工夫もこれまでになく取り入れてあります。市町村・保健所の担当者の方々におかれましては、本書を保健施策立案などに十分に活用されることを願ってやみません。
平成23年6月
三宅浩次
西 基